「ヒトは地上最速の動物だった」読後感
「ヒトは地上最速の動物だった」高岡英夫著(講談社)を読んで感じたことをまとめました。 (⇒から後が私の感想です)
◆人間の場合は、両脚を互い違いに前後に動かす股関節周囲の筋群が主な駆動筋です。そして、体幹部による前後へのあおり運動も、左右への波動運動も、体幹を軸とした軸回り運動も、どれもきわめて抑制されています。・・・それに対し四足哺乳動物では、体幹部を前後に大きく屈伸するあおり運動が見られ、・・・エリマキトカゲでは、体幹部を左右方向にクネクネさせる波動運動が見られ・・・体幹部の軸回り運動も見られ・・・。
今日の走行運動や歩行運動の理論では、脚は平行に使うのが常識となっています。ゆえに、ガニ股には、安定感はあるがアジリティは低い、という図式が成り立っています。・・・その図式の誤りが認識されるようになれば、真に速い動きを身につけたいと思っている人々は、いずれエリマキトカゲのような“ガニ股走法”をやりだすのでは、と私は推測しています。
⇒上記2つの文章を読んで、実際に「脚は平行に使うのが常識となっています。」ことに反して、歩行時に「脚を前に出す意識」を「脚を外側に出す」意識に変えてみました。
するとどうなったかと言えば・・・
脚を「前」ではなく「外側」に出す意識で歩いても、実際の脚は前に出ているし、何も不都合なことは生じませんでした(特に「ガニ股」にもなっていない・・・)。
意識の違いによって、どのようにアウトプットが変化するのか、に関しては、これから検証していきたいと思っていますが、“ガニ股走法”(私の場合は歩行法ですし、正確には“ガニ股意識歩行法”となりますが)の可能性があるのではないかと思うと、ワクワクしてきます。
ちなみに、高岡氏は「真に速い動きを身につけたいと思っている人々は・・・」と書いていますが、高岡氏自身どうしてやりださないのか、不思議で仕方がありません。
◆人間の身体つきに目をやると、人間の身体はX軸方向(前後)に偏平だということがわかります。・・・このような形状の身体が、構造上、Z軸方向(左右)に激しい運動をするのに適しているのは明らかです。つまり、人間の身体つきというのは、基本的にY・Z平面上(上下左右の面)での運動に向いた構造をしているということです。・・・X・Z平面で表現すると、XとZの中間方向上、つまりは斜めに脚を振子運動させるのに一番適したカタチをしている。
⇒先述した「脚を外側に出す」意識の歩行法は、フィットネスのサイドステップのような感じで歩くことから、「サイドステップ歩行法」と私は勝手に呼んでいます。「サイドステップのような感じで」という意味では、「Y・Z平面上(上下左右の面)での運動」ということになります。いずれにしても、アウトプットの検証はこれからです。
◆速さを決めるのは重心落下点-支持点差であり、その差を決めるのは身体の傾き(「傾倒度」)であるということが、ここまでの議論で明らかとなりました。
深傾倒度を可能にする条件にはどんなものがあるのでしょうか。
第一条件:アシを前方へ挙上する筋肉を、大腿直筋から腸腰筋にチェンジしてしまえばよい・・・しかしそれには二つの問題があります。①このチェンジが簡単なことではないこと:身体も心もゆるめればいい②腸腰筋が強力にスイッチオンし、それに比して大腿直筋が使われなくなると・・・ガニ股になってしまう:必然的に素晴らしい恩恵をもたらす。
第二条件:アシの全関節を、自由運動できるようにプラプラに解放して、アシを超高速で動作させること。(「双鞭運動」)
第三条件:足首の関節が強靱であると同時に。クニャクニャでも足りないほど柔らかいこと。そして足首の深い屈曲に抵抗する可能性のある・・・筋肉などが・・・自在に脱力し得ること。
⇒第一条件は、私も重要だと感じています。「脚を前方へ挙上する」というよりは、(重力を利用して脚を前に進める際に)重力によって落とされた脚を「元に引き戻す(挙げる)」ことに私はポイントを置いているのですが、おそらく同じことを言っているように思います。
そして、これは、「脳卒中片麻痺の特徴的な歩行」と言われている 「ぶん回し歩行」に通ずるものがあるように感じています。
そもそも、どうして「ぶん回し歩行」をせざるを得ないのか?と考えると、「重力を利用せざるを得ない」ということなのでは、と感じています。
第二条件の「プラプラに解放して」についても、第一条件のところで述べたことと同様のことが言えると思います。
また「超高速」の部分は、パーキンソン病に特徴的な「小刻み歩行」が想起されます。
「小刻み歩行」は、姿勢障害によると言われていますが、「深傾倒度」自体が一種の姿勢障害のような気がしています。
第三条件は、第一・第二と比較すると、そこまで必要だろうか、と私は感じています。
いずれにしても、「ぶん回し歩行」や「小刻み歩行」のように、通常歩行ができない(動きに制約のある)方々の歩行が参考になるように感じています。
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